「はがせるタイプと書いてあったのに、剥がしたら壁紙がビリッと破れた」というトラブル。この原因は、一般的な住宅に普及している「塩化ビニル樹脂系壁紙(ビニールクロス)」の構造と、テープの粘着メカニズムの不一致にあります。
日本の住宅の約9割で採用されているビニールクロスは、薄い表面の塩化ビニル層と裏面の紙(裏打ち紙)の2層構造で作られています。表面には細かな凹凸(エンボス加工)があり、非常に破れやすい性質を持っています。強力な粘着テープを貼り付けて長期間放置すると、粘着剤がビニールクロスの微小な隙間に入り込んで強固に密着します。この状態でテープを手前に無理やり引っ張ると、テープの粘着力がビニールクロスと裏打ち紙の結合力を上回り、壁紙の表面が裏紙ごと引きちぎれてしまうのです。
特に注意が必要なのが、SNSやショート動画で「何でも浮かせられる」と爆発的なブームを巻き起こした厚手のアクリルゲル状両面テープ、通称「魔法のテープ」です。SNSの投稿を鵜呑みにして壁紙に直接貼ってしまい、カレンダーや電源タップを剥がそうとした瞬間に壁紙を丸ごと破壊してしまったという被害報告が、知恵袋やX(旧Twitter)で数多く投稿されています。
魔法のテープが壁紙を破る理由は、その粘着面積と密着性の高さにあります。凹凸のある壁紙に対してもゲルの柔軟性で隙間なく密着し、さらに経年劣化や可塑剤(プラスチックを柔らかくする成分)の移行によって粘着力が時間とともに増大します。はがせる両面テープであっても、製品ごとに「適した被着体(貼る相手)」が明確に定められており、「一般用」「超強力」と書かれたテープをビニールクロスに直接貼るのは自爆行為と言わざるを得ません。