鴈龍さんの後半生を語る上で避けて通れないのが、母・中村玉緒さんとの複雑な愛憎関係と確執です。勝新太郎さんの没後、玉緒さんはバラエティ番組『さんまのSUPERからくりTV』などで天真爛漫なキャラクターを確立し、夫の遺した14億円超とも言われる借金を完済しました。その資金力と母性から、仕事に恵まれない息子に対して毎月数百万円規模の仕送りや住居の手配など、手厚すぎる生活支援を続けていたことが週刊誌等で報じられています。
しかし、50歳を過ぎても定職に就かず、母の経済力に依存し続ける息子の姿に対し、玉緒さんの周囲や個人事務所スタッフからは厳しい視線が注がれていました。関係者の証言によると、2010年代半ば、玉緒さんは断腸の思いで「自分の足で立ちなさい。もう仕送りは一切送らない」と最後通牒を突きつけ、生活費の援助を完全にストップしたとされています。これがメディアで「親子の絶縁」と騒がれた騒動の実態でした。
鴈龍さんは生活拠点を行きつけだった名古屋へと移し、飲食店の厨房手伝いやアルバイトで食いつなぐ過酷な日々に身を投じます。知人たちの証言では、「愚痴をこぼすことは少なかったが、勝新太郎の息子と言われることを極度に恐れていた」「心臓の持病を抱えながらも病院に通う金銭的余裕がなかったのではないか」といった悲痛な生活実態が浮き彫りになっています。母の厳しい突き放しは親心ゆえの「自立への祈り」でしたが、一度も一般社会の荒波に揉まれたことがなかった男にとって、その断絶はあまりにも過酷な現実でした。