Oneohtrix Point Never(以下、OPN)名義で知られるダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)は、1982年アメリカ・マサチューセッツ州生まれの音楽家・プロデューサーです。ロシア系ユダヤ人移民の音楽一家に育った彼は、幼少期に父親が所有していたアナログシンセサイザーの名機「Roland Juno-60」に触れたことをきっかけに、音響合成の深淵へと足を踏み入れました。
「Oneohtrix Point Never」という独特のプロジェクト名は、ボストンのFMラジオ局「Magic 106.7(ワン・オー・シックス・ポイント・セブン)」の語感を文字った言葉遊びに由来します。電波に乗って流れるノイズやソフトロック、コマーシャルの断片といった「消費社会の音響遺産」を再構成する彼の制作手法は、すでに名付けの段階から予見されていたと言えます。
ダニエル・ロパティンの経歴を語る上で欠かせないのが、2010年にチャック・パーソン(Chuck Person)名義で発表したカセット作品『Chuck Person's Eccojams Vol. 1』です。80年代ポップスの断片をチョップ&スクリューし、過剰なリバーブをかけたこの作品は、インターネット発の巨大カルチャー「Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)」の決定的な引き金を引きました。
その後、2013年にはエイフェックス・ツインやフライング・ロータスを擁する名門ワープ・レコーズ(Warp Records)と契約。シンセサイザーの持続音を基調としたドローン/アンビエントから、MIDI音源やサンプリングを極限まで精緻に配置した独自の音響彫刻へとスタイルを進化させ、世界的な評価を決定づけました。