物語の主人公キム・ジヨンは、1982年生まれの33歳。韓国で最も多い名前のひとつを与えられた彼女は、広告代理店でキャリアを積んでいましたが、結婚と出産を機に退職し、現在は1歳になる娘の育児と家事に追われる専業主婦として暮らしています。
夫のチョン・デヒョンはIT企業に勤める誠実な男性で、妻を深く愛し、家事や育児にも協力的です。しかしジヨンは、社会から切り離された孤独感や、日々の終わりのないケア労働の中で、少しずつ心のバランスを崩していきます。ある日を境に、彼女は突然、まるで別の人格が乗り移ったかのような言動を見せるようになります。その異変に最初に気づいたのは、他でもない夫のデヒョンでした。
本作の説得力を決定づけたのは、確かな演技力を持つキャスト陣のアンサンブルです。
- キム・ジヨン役(チョン・ユミ):理不尽を飲み込むことでしか生きられなかった女性の微細な表情の変化、虚脱感、そして魂の叫びを圧倒的なリアリティで体現。激しいバッシングを恐れずオファーを受けた姿勢が高く評価されました。
- チョン・デヒョン役(コン・ユ):『トガニ 幼き瞳の告発』『新感染 ファイナル・エクスプレス』に続きチョン・ユミと3度目の共演。決して悪人ではなく、むしろ「理解のある優しい夫」でありながら、構造的な加害性に無自覚であった男性の苦悩と葛藤を誠実に演じ切りました。
- ミスク役(キム・ミギョン):ジヨンの実母。自らも弟たちの学費のために進学を諦め、身を粉にして働いてきた歴史を持つ母親役を演じ、観客の涙を誘いました。