急性アルコール筋症を「たかがお酒の筋肉痛」と軽視してはならない最大の理由は、命に関わる指定難病レベルの病態「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」へと地続きで繋がっている点にある。
横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が大規模に壊死・融解し、筋肉の構成成分であるミオグロビンやクレアチンキナーゼ(CK/CPK)、カリウムなどが大量に血中へ流出する病態を指す。血液中に溢れ出した大量のミオグロビンは腎臓の尿細管を詰まらせ、急激な「急性腎不全」を引き起こす。重症化すると人工透析が必要となり、高カリウム血症による不整脈から心停止に至るケースすら存在する。
自力で様子を見て良いレベルと、直ちに救命救急や医療機関へ駆け込むべきレベルを分ける「決定的な4大サイン」は以下の通りである。
- 尿の色が「コーラ色・赤褐色・濃い紅茶色」に変色している(ミオグロビンが尿中に排出されている動かぬ証拠)。
- 尿量が極端に減少した、あるいは半日以上まったく尿が出ない。
- 痛みのあまり自力で立ち上がることができず、手足に力が入らない(四肢の麻痺・強い脱力)。
- 筋肉が異常にパンパンに腫れ上がり、触れるだけで飛び上がるような激痛がある。
これらの初期症状が一つでも見られた場合は、一刻の猶予もなく病院を受診しなければならない。受診すべき診療科は、「内科」「一般内科」「総合診療科」または「救急科」である。「筋肉が痛いから」と骨や関節を診る整形外科や整骨院へ足を運んでも、血液検査や緊急点滴設備が整っていなければ対応できない。病院では血液検査によってCK値やクレアチニン値、電解質を測定し、大量の輸液(点滴)を行ってミオグロビンを体外へ洗い流す緊急治療が行われる。