日常の食事から慶事・接待まで幅広く親しまれる天ぷら料理ですが、提供スタイルによって設計思想が根本から異なります。最大の違いは「天ぷら定食」が衣の軽快なクリスピー感を大根おろしと天つゆで味わう料理であるのに対し、「天重」や「天丼」はタレとご飯、天ぷらが一体化して完結する複合料理である点です。
さらに「天重と天丼の違い」に目を向けると、単なる形状の差を超えた伝統的な格式と素材の割り当てが浮かび上がります。四角い重箱は、古くから武家社会や上方文化において「慶びを重ねる」縁起物として用いられ、丸い陶器の丼鉢(庶民の日常食)よりも一段上の格付けとして扱われてきました。そのため、高級天ぷら専門店では、最高級の海老天ぷら(車海老)や大ぶりの活〆穴子を配置する際に必ず重箱を選定します。