2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会に向けて、アディダスが総力を挙げて開発した公式球が「ジャブラニ」です。南アフリカの公用語の1つであるズールー語で「祝杯」や「祝う」を意味する名を冠し、アフリカ大陸初開催となる祭典を華やかに彩るはずでした。
デザインには南アフリカの公用語数や民族の多様性を象徴する11色が使われ、見た目の美しさは世界中で高く評価されました。しかし、ひとたび試合が始まると、賞賛の声は悲鳴と怒号へと塗り替えられます。シュートやロングパスが放たれるたび、ボールは空中で不自然にお辞儀をし、急激に左右へ揺れるなど、かつて誰も見たことがない軌道を描いたのです。
高地特有の薄い空気も重なり、南アフリカのピッチは「ジャブラニの予測不能な動き」によって支配されることとなりました。