車海老を調理する際、多くの人が最も悩むのが「頭と殻の扱い」です。一般家庭のアンケートや料理相談コミュニティでも、「殻を剥いた後の頭をそのままゴミ箱に捨ててしまった」という声が頻繁に見受けられます。しかし、調理科学および食文化の視点から見れば、これは食材のポテンシャルを半分以上無駄にしていると言っても過言ではありません。
まず注目すべきは、頭部の中に蓄えられた「海老味噌(中腸腺)」の存在です。車海老の味噌の食べ方として最も親しまれているのは、頭を丸ごと使った味噌汁や潮汁、そしてじっくり香ばしく焼き上げる塩焼きです。頭部にはグルタミン酸やグリシンといった旨味成分が身以上に濃縮されており、汁物に仕立てると短時間で芳醇な出汁が抽出されます。頭の付け根から染み出す琥珀色の味噌は、日本酒のアテとしても極上の風味を誇ります。
また、車海老の頭の食べ方として料理人が推奨するのが「二度揚げによる素揚げ・唐揚げ」です。頭部の先端にある鋭い角(額角)と目元をハサミで切り落とし、水分をペーパーで完全に拭き取った上で、160℃の低温でじっくり水分を飛ばし、仕上げに180℃の高温でカラッと揚げることで、サクサクとしたスナックのような食感に変化します。殻に含まれるキチン質やアスタキサンチンが熱によって芳ばしいアロマ成分(ピラジン類)へと変化し、香ばしさとカルシウムを丸ごと摂取できる車海老を殻ごと食べるレシピとして成立します。捨てるはずだった部位が、瞬く間に主役級の酒肴へと生まれ変わるのです。