唐辛子の収穫と保存を巡っては、ネット上で誤った栽培常識が流布されており、それが原因で収穫物を全滅させてしまうケースが少なくありません。ここでは特に注意すべき2つの誤解を正します。
誤解1:「寒くなっても樹上に放置すれば自然にすべて赤くなる」
「放置しておけば冬前には勝手に真っ赤になる」という言説は危険な誤認です。唐辛子は熱帯アメリカ原産のナス科トウガラシ属であり、寒さに極めて弱い性質を持っています。日中の気温が15℃を下回ると成熟スピードは著しく鈍化し、5℃以下で生育が完全にストップします。
最悪なのは、唐辛子収穫時期と霜対策を軽視することです。唐辛子の細胞は水分を多く含んでいるため、一度でも初霜に当たると細胞壁が破壊され、実は数時間で水っぽく変色して腐敗します。天気予報で最低気温が5℃を下回る予報が出た時点で、樹上に残っている実は赤・青を問わずすべて収穫するか、株ごと刈り取らなければなりません。
霜直前に収穫した半熟果(薄緑やオレンジ色)については、唐辛子追熟のやり方を正しく実践すれば赤く仕上げることが可能です。実単体をヘタ付きで収穫し、新聞紙を敷いた通気性の良いカゴに入れて室内の20℃前後の風通しの良い日陰に静置します。リンゴと一緒に袋に入れることで発生するエチレンガスを利用して着色を促す方法も有効です。ただし、完全に青い初期段階の実は追熟しても赤くならずシワシワに萎びるため、青唐辛子として消費するのが賢明です。
誤解2:「ザルに広げて天日干ししておけば誰でも簡単に乾燥できる」
「洗ってザルに並べて外に干すだけ」という安易な方法が、唐辛子乾燥保存失敗の原因第1位です。外干しによる失敗の大半は、日本の秋特有の秋雨前線や夜露による湿気戻りです。日中に乾いても、夜間に外へ放置したままにすると夜露を吸って内部にカビが発生します。
特に肉厚な品種や丸ごとの実は、内部の水分が抜け切る前にヘタの付け根付近から白カビ・黒カビが繁殖し、割ってみると中が真っ黒に腐敗していたという事態が頻発します。さらに、直射日光に長期間当て続けると、紫外線によってカプサイシンや色素成分(カプサンチン)が分解され、色が白っぽく退色して辛味も風味も劣化してしまいます。