霊火堂の炎は、宗教建築の枠を越え、激動の昭和史・平和運動とも深く結びついている。1964年、原子爆弾の惨禍を乗り越え恒久平和を誓うモニュメントとして整備された広島平和記念公園の「平和の灯」。その建設にあたり、核兵器廃絶への祈りを象徴する元火として選ばれたのが、ほかでもないこの弥山の炎であった。
世界平和を願う歴史ドキュメンタリーでも度々描かれてきたこのエピソードは、古代の山岳修行の火が、現代における反戦と再生の祈りへと見事に昇華された好例だ。被爆から長い歳月を経た現在もなお、広島から世界へ発信されるメッセージの根底には、宮島の霊山で守られてきた普遍的な命の炎が静かに息づいている。