暖簾をくぐった客の実に8割以上が注文するのが、看板メニューの「ムルギーランチ」です。ランチと銘打たれていますが、ディナータイムでも終日注文できるナイルの代名詞的存在です。鮮やかな黄色に輝くターメリックライスの上に、スパイスでじっくり煮込まれた丸ごとの国産鶏もも肉、温野菜のキャベツ、そして滑らかなマッシュポテトが豪快に盛り付けられています。
テーブルに運ばれてくると、ベテラン給仕スタッフが銀のナイフとフォークを鮮やかに操り、骨から肉を素早く削ぎ落としてくれます。この一連のパフォーマンスこそが名物であり、直後に店員から発せられる「はい、ぜんぶよーく、まじぇて(混ぜて)食べてね!」というお決まりの声がけは、同店を訪れた者だけが味わえる名物体験です。
ここで重要なのがムルギーランチの食べ方です。日本のライスカレーのように「ルーとご飯を少しずつ崩しながら食べる」のは、この料理においては推奨されません。チキン、キャベツの甘み、ポテトのコク、そしてスパイシーなグレイビーを、文字通り渾然一体となるまでスプーンで力強く混ぜ合わせることで、初めて完成する味の設計になっています。スパイスのシャープな辛味をポテトが包み込み、煮込みキャベツの水分が全体の旨味を底上げする重層的な味わいは、70年以上の歴史が生み出した唯一無二の黄金比です。