予定日から1〜2週間程度の遅れであれば経過観察の余地がありますが、生理が2ヶ月来ない原因とリスクは全く別の深刻度を帯びてきます。周期日数で言えば60日を超えている状態であり、臨床的には生理不順における婦人科受診の目安の限界点に達しています。
日本生殖医学会や産婦人科の診療基準において、過去に順調だった月経が3ヶ月以上停止した状態は「続発性無月経」と診断されます。そして、この境界線手前で最も頻度が高い病態が「心因性(ストレス性)無月経」です。ストレス性無月経の判断基準としては、過剰な精神的重圧や過労、急激なダイエット(3ヶ月で体重の10%以上の減少など)の直後から無月経が始まっていること、血液検査においてエストロゲンやゴナドトロピン(LH・FSH)が低値〜正常下限を示し、高プロラクチン血症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能低下症などの器質的疾患が除外されることが挙げられます。
2ヶ月以上放置する最大の医学的リスクは、若年性の骨密度低下と将来的な不妊リスクです。長期間にわたり卵胞が発育せずエストロゲンが極端に欠乏した状態が続くと、20代や30代であっても骨からカルシウムが溶け出し、骨粗鬆症のリスクが跳ね上がります。また、子宮内膜が長期にわたり更新されないことで子宮そのものが萎縮し、卵巣が排卵命令を受け付けにくくなる「不可逆的な排卵障害」へと発展する恐れがあります。
婦人科への初診を躊躇する理由として「内診台が怖い」という心理的抵抗感がよく挙げられますが、性交経験がない場合や強い恐怖心がある場合は、問診時に明確に伝えることで経腹超音波や採血、腹部MRIなど別の検査手法に切り替える配慮がなされます。問診表に「最終月経日」「遅れの日数」「直近のライフスタイルの変化」をメモして持参するだけで、診療は極めてスムーズに進行します。