五・七・五・七・七という独特の音律を持つ詩形の基本名称は短歌(たんか)です。歴史的には「和歌(やまとうた)」という大きな枠組みの中に位置づけられ、古代においては長歌(五七を繰り返した末に七七で結ぶ形式)に対する「短い歌」という意味合いで名付けられました。明治時代以降、正岡子規や与謝野晶子らによる文学革新運動を経て、近現代の独立した文学ジャンルとして確立された経緯があります。
初心者が最も混同しやすいのが「俳句」との境界線です。両者の決定的な相違点は、文字数(音数)の差異だけにとどまりません。季語の有無と決まり、そして「詠む対象の本質」において明確な思想の違いが存在します。
俳句は五・七・五の計17音で構成され、原則として春夏秋冬を表す「季語」を1つ詠み込む有季定型を遵守します。さらに「や」「かな」「けり」といった切れ字によって風景を瞬間的に切り取り、自然の摂理や余白を味わう客観写生が主眼に置かれます。
対照的に短歌は五・七・五・七・七の計31音で構成され、季語を入れる義務は一切ありません。文字数が14音多い下句(七・七)が存在することで、上句(五・七・五)で提示した情景に対して、作者自身の心情や主観的なつぶやき、人間関係の機微を余すところなく投影できます。つまり、俳句が「世界の一瞬を切り取るスナップ写真」であるならば、短歌は「内面のエモーションを焼き付ける短編映画」といえます。