食後の安静には、食事から吸収された栄養素を処理する「肝臓」への血流を増やし、代謝を活性化させるという大きなメリットがあります。食後は胃や腸だけでなく、門脈を通じて肝臓へ大量の血液を送り込む必要があります。体を横たえて安静にすることで、筋肉への血液配分が減り、肝血流はおよそ20〜30%増加すると報告されています。
しかし、その恩恵を台無しにしてしまう「NGな横になり方」が日常に潜んでいます。
第一の盲点は、「ベルトやきつい衣服を着用したまま横になること」です。腹部が強く締め付けられると腹圧が上昇し、胃の内容物が食道へ押し出されます。下部食道括約筋が緩んでいる食後直後に腹圧がかかると、どれだけ寝相に気をつけていても胃酸が逆流します。
第二の盲点は、「フラットな枕で完全に水平に寝てしまうこと」です。人間の胃酸はpH1〜2という極めて強い塩酸であり、金属を溶かすほどの腐食性を持っています。胃壁は厚い粘液で守られていますが、食道の粘膜にはその防御機構がありません。完全に水平な状態で横たわると、重力による抑えが効かなくなり、わずかな括約筋の緩みから胃酸が食道へ浸潤し、粘膜をただれさせてしまいます。
第三の盲点は、「食後2時間以内に就寝すること」です。睡眠中は唾液の分泌量が激減します。唾液には酸を中和し、食道に逆流した胃酸を洗い流す「クリアランス機能」がありますが、熟睡するとこの防御が失われます。食後の胃の中に大量の内容物が残ったまま朝まで眠ってしまう習慣は、慢性的な逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアを招く最大の要因となります。