夏と冬、東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケットの現場で巻き起こる狂乱。その熱狂を受け止める最大のインフラとして、現在も不動の地位を保っているのがとらのあな通信販売だ。池袋の実店舗があった時代、イベント翌日の店内はまさに戦場だった。完売御礼で手に入らなかった新刊を求め、開店前から数百メートルに及ぶ長蛇の列ができた光景を覚えている人も多いだろう。
現在の主戦場は、千葉県などの巨大物流拠点にあるフルフィルメントセンターだ。イベント終了と同時に数万点規模の同人誌が運び込まれ、高度に自動化されたピッキングシステムによって全国へ発送される。かつてレジ打ちスタッフの手さばきに支えられていた即売会の余熱は、いまや冷徹なまでに正確な物流アルゴリズムによって処理されている。そこには情緒の喪失と引き換えに手に入れた、圧倒的な利便性と全国一律のアクセス性がある。