なぜ良質なたけのこを丁寧に冷凍しても、解凍した瞬間に高野豆腐のようなスカスカの残骸に変わり果ててしまうのでしょうか。その理由は、たけのこ特有の組織構造と水分の物理現象に隠されています。
食品科学の分析データによると、たけのこの可食部には約90%前後の水分が含まれています。それと同時に、植物の骨格を形成する不溶性食物繊維(セルロースやリグニン)が緻密な網目構造を作っています。家庭用冷凍庫の緩慢冷却環境(マイナス18度前後でゆっくり冷える状態)にたけのこをそのまま入れると、細胞内の水分が集まって巨大な氷の結晶へと成長します。
この肥大化した氷結晶が、繊細なたけのこの細胞壁を内側からズタズタに突き破ります。そして解凍の段階を迎えると、破壊された細胞壁から水分が一気に「ドリップ(離水)」として流れ出してしまいます。その結果、水分が抜け落ちた空洞がスポンジ状に残り、噛んでもジュワッとした旨味が出ない「スカスカ」の状態を生み出してしまうのです。
さらに、根元に近い部分は成長に伴ってリグニンと呼ばれる硬化物質が沈着しています。水分が抜けることでこの硬い繊維だけが口の中に残り、咀嚼しても噛み切れない「筋っぽさ」が極端に際立ってしまうのが失敗のメカニズムです。