「採血で血管が細いと言われたが、将来心筋梗塞や脳卒中になりやすいのか」という相談がネット相談窓口などに散見されます。結論から言えば、これは完全な医学的誤解です。
心筋梗塞や脳梗塞の引き金となるのは、高い血圧とコレステロール沈着によって血管壁が硬く狭くなる「動脈」の病態です。一方、採血や点滴で目にするのは、全身から心臓へゆっくり血液を戻す「静脈」です。静脈が細いことや皮膚の奥にあることは、動脈硬化の進行度とは一切関係がありません。腕の静脈が見当たらないからといって、循環器系の重病を過度に恐れる必要はないのです。
ただし、血管細い病気のリスクとして注意すべき側面もゼロではありません。病的背景として以下のようなケースが潜んでいることがあります。
第一に、甲状腺機能低下症や重度の貧血、低血圧症などの基礎疾患です。これらがあると基礎代謝や血流量が低下し、全身の末梢循環が慢性的に不足して静脈が萎縮しやすくなります。第二に、強い痛みや恐怖心が引き起こす「血管迷走神経反射」のリスクです。何度も針を刺し直されるストレスから迷走神経が過剰に働き、急激な血圧低下や徐脈を招いて脳貧血を起こし、処置室で倒れてしまう事例が後を絶ちません。
さらに見逃せないのが、採血後の内出血対策の不備による皮下血腫です。細くて脆い血管に針を通した場合、穿刺部からの止血に通常以上の時間がかかります。「揉んで散らそう」としたり、指で軽く押さえただけで立ち去ったりすると、皮下に血液が漏れ出して広範囲な青あざとなり、痛みが数週間残る原因になります。