ネット上の議論で頻繁に見られるのが、「配膳ロボットやセルフレジ、タッチパネル注文を導入したDX店舗なら、人件費をかけずに24時間営業を維持できるのではないか」という疑問です。しかし、飲食店のオペレーション現場には、デジタル技術だけでは絶対にクリアできない大きな壁が存在します。
第1に、深夜帯特有の安全管理・トラブル抑止機能です。深夜営業を行う飲食店には、泥酔者、無断居眠り、万引き、金銭トラブルといったリスクが昼間とは比較にならない確率で発生します。配膳ロボットには客同士の喧嘩を仲裁することも、無銭飲食を防ぐこともできません。結局のところ、防犯と店内規律を維持するためには、相応の訓練を受けた人間のスタッフを最低2名以上配置せざるを得ないのです。
第2に、食品衛生法に基づく調理・仕込み・清掃の物理的制約です。レストランの厨房機器は、24時間連続で稼働させ続けると油や熱による劣化が進み、衛生基準を保つための大規模なリセット清掃が日中にできなくなります。深夜に店舗を閉めることで、徹底した機器洗浄、食材の仕込み、翌日の納品受領を安全に行う時間的余裕が生まれ、結果として昼間の提供スピードと品質が担保されます。
DX(デジタル変革)は「少人数で昼間のピークを乗り切る」ための武器にはなっても、「赤字の深夜営業を黒字化させる魔法の杖」にはなり得ないのが業界の現実です。