大手ハウスメーカーの住宅展示場や不動産販売の現場を取材すると、消費者が陥りやすい典型的な心理的バイアスが浮かび上がってきます。それが「高額な免震にしておけば、あらゆる天災から永久に逃れられる」という安全神話への過信です。
一級建築士として数々の超高層ビルや免震住宅の構造設計を手がけてきた専門家は、取材に対して次のように現場の実情を明かします。
「お客様の多くは『免震なら絶対に安心ですよね』と仰います。しかし、免震装置には明確な弱点と設置不適地が存在します。例えば、軟弱な粘土質地盤や埋立地のような地盤では、地盤自体の揺れの周期と建物の免震周期が同調(共振)してしまい、かえって揺れが増幅される危険性があります。また、直下型地震における『鉛直方向(縦揺れ)』の突き上げるような力に対しては、積層ゴムは横にしか逃げられないため、耐震住宅と同様にそのまま衝撃が建物に突き抜けます」
社会学や防災心理学の観点からも、人は巨額の買い物をするときほど「一番高いスペックを選んだのだから自分は完璧に対策した」という防衛機制(コミットメントのエスカレーション)が働き、周辺環境のハザードマップ確認や家具の配置確認といった日常的な防災努力を放棄してしまう傾向が指摘されています。
敷地の地盤種別(第1種〜第3種地盤)、水害リスク(洪水・高潮浸水想定区域)、さらには敷地の高低差(擁壁の有無)を無視して免震構造に固執することは、技術の適材適所という建築の基本原則から大きく逸脱する行為と言わざるを得ません。