1990年代、爆発的なヒットを記録した「シングルベッド」や「ズルい女」でチャートを席巻したバンド、シャ乱Q。そのフロントマンとして脚光を浴びたつんく♂を襲ったのは、あまりにも残酷な運命だった。2014年、喉頭がんの罹患を公表。治療を重ねたものの病状は刻一刻と進行し、彼に提示された選択肢は「声を残して命を危険に晒すか」、それとも「声を捨てて生きるか」という究極の二択だった。
長年所属するアップフロントグループのスタッフや愛する家族に見守られる中、彼は命を選んだ。声帯摘出手術。それは歌手にとっての死と同義であり、表現者としてのアイデンティティを根本から揺るがす出来事だった。近畿大学の入学式で示された「声を捨て、命を選びました」という文字盤でのメッセージは、日本中の人々の胸を打った。