音楽評論家やプロのギタリストたちが一様に驚嘆するのが、村下孝蔵の驚異的なギターテクニックです。レコーディング音源では美しいストリングスやアレンジに包まれていますが、その真価が最も露わになるのは、ギター1本で歌い上げるライブ音源や弾き語りのステージです。
彼のアコースティックギター演奏における最大の特徴は、少年時代に熱中したザ・ベンチャーズや加山雄三のインストルメンタルで培われた、フラットピックを用いた超高速ピッキングとカッティングにあります。
通常、フォークシンガーはスリーフィンガーやアルペジオを指先で行うことが多いですが、村下孝蔵はピックを持ちながら中指・薬指を同時に使うハイブリッドピッキングや、親指にサムピックを装着してベース音を力強く刻みながらメロディとパーカッシブなアタック音を同時に鳴らすスタイルを駆使していました。
当時のツアースタッフやサポートミュージシャンの証言によると、「リハーサルでも一切妥協がなく、生放送のテレビ出演時でもギターアンプから出る音圧はフルバンド並みだった」と語られています。ライブ盤『七夕夜話』などに記録された生演奏を聴くと、リズムのブレが一切なく、まるで2〜3人のギタリストが同時に弾いているかのような音の厚みに圧倒されます。