『幽☆遊☆白書』の物語において、読者に最大の衝撃を与えたターニングポイントこそが、コミックス第17巻で明かされた浦飯幽助の魔族覚醒です。それまで皿屋敷中学の単なる不良中学生であり、霊光波動拳の正統後継者として戦ってきた幽助が、突如として人間を超越した存在であった事実が突きつけられました。
覚醒の直接的な理由は、太古の魔界三大妖怪の頂点に君臨した闘神・雷禅(らいぜん)の血統にあります。およそ700年前、食人鬼であった雷禅は一人の人間の食脱医師(人を喰らわぬよう自らの肉体で毒を試す聖なる女医)と出会い、その気高さに魅了されて一夜を共にしました。雷禅は「二度と人間を喰わない」という不可逆の誓いを立て、人間界に残した自らの遺伝子へ、ある特殊な細工を施します。それが、数世代後に自身の血統と同等の器を持つ子孫が現れた際、初めて魔族の因子を発現させる「魔族大隔世(まぞくだいかくせい)」という防壁でした。
幽助の母である浦飯温子(うらめし あつこ)の家系は、表向きは平凡な人間の血統として営みを重ねていましたが、44代目の幽助に至って雷禅の強大な波長と完全に合致。仙水忍の放った気功波によって心臓を撃ち抜かれ、人間としての生命活動が停止した瞬間、胸の奥底に眠っていた「魔族の核」が胎動をはじめました。止まったはずの心臓の代わりに魔族の核が脈打ち、幽助は禍々しくも美しい長髪と文様をまとった魔族の戦士として異形の復活を遂げたのです。