重ね付けを検討する際、誰もが最初に直面するのが「どちらを先にはめるべきか」という疑問です。ブライダルシーンにおける国際的なプロトコルおよび装飾文化史において、基本の順番は「結婚指輪が下(手のひら・指の根元側)、婚約指輪が上(指先側)」と定められています。
この順番が定着した背景には、欧米の伝統に根ざしたロマンチックな意味合いが存在します。「ふたりの永遠の愛を誓った証である結婚指輪を、その上から婚約指輪で留める(ロックする)」というストーリーです。心臓に直結すると信じられてきた左手薬指の根元、より心臓に近い場所に結婚指輪を配置し、婚約指輪でその誓いを封じ込めるという儀礼的背景が広く浸透しました。
実用面および装飾工学の観点からも、この順番は理にかなっています。日常的に24時間身につけることを前提とした結婚指輪は、凹凸が少なくストレートな形状が多く作られています。一方、センターダイヤモンドが突出している婚約指輪を指先側に配置することで、関節の曲げ伸ばし時における手の甲への干渉を最小限に抑え、リング全体の安定感を保つ効果があるのです。
ただし、結婚式当日の挙式中だけは例外的な動きが求められます。指輪交換のセレモニーを滞りなく行うため、新婦はあらかじめ婚約指輪を「右手の薬指」にはめておき、挙式後の披露宴やウェルカムパーティーの前に改めて左手の結婚指輪の上へと重ねるのが正式なマナーです。