日本歌謡史において燦然と輝く加山雄三 旅人よ 誕生秘話には、若き日の加山雄三と作詞家・岩谷時子の間に通い合っていた、唯一無二の創作的信頼関係が色濃く刻まれています。
本作が世に出たのは、加山雄三 旅人よ 発売年 1966年(昭和41年)9月のことでした。当時の加山雄三は、東宝映画『若大将シリーズ』の大ヒットにより国民的スターの座を不動のものにし、前年にリリースされた『君といつまでも』の特大ヒットでシンガーソングライターのパイオニアとしての地位を確立していました。そんな多忙を極める最中、旅人よ 作曲 弾厚作という名義のもとで、移動中のわずかな合間やロケ先で爪弾かれたアコースティックギターから、あの哀愁漂うメロディが紡ぎ出されたのです。
弾厚作が生み出した切なくも雄大な旋律を受け取ったのが、彼の才能を誰よりも早く見抜き、数々の名曲を二人三脚で生み出してきた旅人よ 作詞 岩谷時子でした。当時の関係者の証言や手記によると、岩谷は加山がカセットテープに吹き込んだハミングとギターのデモ音源を聴いた瞬間、青年の胸に去来する孤独と、未知の地平へと向かう情熱を直感したといいます。岩谷は、加山が持つカラッとした湘南サウンドの陽のイメージの裏側にある、表現者としての繊細な陰影を的確に掬い上げ、わずか数日で永遠の詩を書き下ろしました。
バックの演奏を担当したのは、加山の従兄弟である喜多嶋修らが在籍していたザ ランチャーズです。エレキギターのドライヴ感とアコースティックの瑞々しい響きを融合させた彼らのアンサンブルは、当時の歌謡曲にはなかった本格的なバンドサウンドを実現させ、楽曲に比類なき躍動感を与えました。