本作において最もファンを驚かせたのは、月下の奇術師こと怪盗キッドの思惑とその行動の真意だ。予告状に記された「世紀末の魔術師」という謎めいた言葉。彼は単に高価な美術品を盗み出すために現れたわけではない。
キッドの真の狙いは、秘宝に秘められた依頼人・香坂夏美の家族の記憶と「思い出の卵」を本来あるべき場所へ送り返すことにあった。作中盤で狙撃手スコーピオンに狙撃されたキッドが、白鳥警部に変装して捜査に密かに同行していた伏線は秀逸極まりない。負傷した鳩を手当てしてくれた江戸川コナンへの報恩として、クライマックスではコナンの正体が毛利蘭に暴かれそうになった絶体絶命のピンチを間一髪で救ってみせる。ライバルでありながら互いを認め合う二人の奇跡的な関係性は、この映画で決定的なものとなった。