高輪築堤はなぜ海に築かれたのか?保存論争の真相と2026年現在の見学法

高輪築堤はなぜ海に築かれたのか?保存論争の真相と2026年現在の見学法

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時は流れて2019年4月。JR東日本が品川車両基地跡地の再開発プロジェクト(後のTAKANAWA GATEWAY CITY構想)を進める過程で、地中深くから漆黒の石垣群が次々と姿を現しました。事前調査の段階では想定されていなかった、保存状態の極めて良好な高輪築堤の遺構でした。

日本考古学協会をはじめとする専門家や学会は即座に「世界文化遺産に匹敵する近代化の至宝」と声を上げ、全面的な現地保存を強く要求しました。当時の現場視察では、石垣の間を鉄道のバラスト(砂利)や枕木が鮮明に残り、明治の息吹をそのまま封じ込めたかのようなタイムカプセル状態であることが確認され、メディアでも連日大きく報じられました。

しかし、ここで巨大な壁が立ち塞がります。すでに着工していたJR東日本の再開発計画は、総事業費約5,000億円超という国家戦略特区の大規模事業でした。築堤が横たわる位置は、まさに新築予定の超高層複合ビル群の基礎杭が打ち込まれるエリアの直下だったのです。

「歴史的遺構の全面保存」を求める文化庁・専門家サイドと、「事業計画の大幅見直しは莫大な損失と数年規模の遅延を招く」と頭を抱える事業者サイド。一時は「全面解体反対」を訴える市民運動や研究者の嘆願署名が活発化し、連日のように保存問題の真相と妥協点を探る水面下の交渉が続けられました。

結果として、JR東日本は計画の一部変更を決断します。当初計画されていたビル棟の配置や基礎構造を見直し、概算で数百億円規模の追加コストを投じることで、価値の極めて高い「第7橋梁部」を含む約160m区間などの主要箇所を現地保存することを表明。2021年9月には文部科学省により正式に「国史跡」として指定される運びとなりました。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。