「育乳ブラを着けて寝れば、脇や背中の脂肪が胸の脂肪に移動して定着する」というセールストークを耳にすることがありますが、形成外科や解剖学の見解として、物理的な圧力によって脂肪細胞が恒久的に位置を変えて固定化されることはありません。では、なぜナイトブラや育乳ブラが20代のケアにおいて必須とされるのでしょうか。
その真の目的は、バストを吊り下げている命綱である「クーパー靭帯」の保護と伸展防止にあります。クーパー靭帯は主成分がコラーゲン線維でできた結合組織ですが、一度過度に引き伸ばされたり断裂したりすると、自己修復して元の長さに戻ることはありません。
成人女性のバストは、仰向けに寝ると外側へ、横向きに寝ると下側へと重力によって四方八方に引っ張られます。この就寝時の物理的ストレスが毎晩蓄積することでクーパー靭帯が徐々に緩み、20代後半から30代にかけての不可逆的な「バストの下垂・外向き・デコルテの削げ」を引き起こす最大の原因となります。ナイトブラの役割は、脂肪を大きくすることではなく、「睡眠中の揺れと重力からバストを無重力状態に近いポジションでホールドし、将来の下垂を食い止める」ことにあるのです。
日中のブラジャー選びにおいても同様です。サイズの合わない小さめのブラで胸を押しつぶしたり、ワイヤーがバージスライン(胸の底面境界線)に食い込んでいたりすると、局所の血流やリンパの流れが阻害され、組織の代謝が著しく低下します。半年に一度は専門スタッフによるフィッティングを受け、自身の現在地に応じた正しいカップサイズ・アンダーサイズを着用することが育乳の絶対条件です。