育児相談の現場やSNS上には、「2人目の妊娠が分かってから急に夜泣きが始まった」「4歳になって落ち着いていたはずなのに、お漏らしが再発して先祖返りしたように甘えてくる」「下の子に授乳していると、わざと乱暴に割り込んできて手がつけられない」といった切実な声が溢れています。多くの保護者が「自立に向かっていたはずの我が子が後退してしまった」と感じ、戸惑いを隠せません。
発達心理学において、この現象は「退行(Regression)」と呼ばれます。心理学者のフロイトやボウルビィが提唱した愛着理論(アタッチメント)に照らし合わせると、子どもにとって親の愛情や関心は生存に直結する絶対的な基盤です。下の子の誕生や妊娠に伴う家庭環境の変化は、子どもにとって「自分の安全基地が奪われるかもしれない」という強烈な危機感を生み出します。
言葉での感情言語化が未熟な幼児期において、「赤ちゃんのような無防備な状態に戻れば、ママやパパは無条件に自分を最優先で守ってくれるはずだ」と無意識に訴えかける行動が赤ちゃん返りの本質です。つまり、わがままや意地悪で親を困らせているのではなく、必死に自分の存在価値と親の愛情を確かめようとする「心理的安全性の再確認行動」にほかなりません。