1980年代の日本の音楽シーンにおいて、アン・ルイスの存在感は圧倒的だった。その鋭利なシャウトとグラマラスなビジュアルを全面に押し出し、歌謡曲の枠組みを完全に破壊した立役者こそがヘンリー広瀬である。
当時のスタジオでは、従来の歌謡曲プロデュースでは考えられない試みが次々と行われていた。最高傑作と称される『六本木心中』のレコーディングでは、過激なギターリフとエレクトロニックなリズムの融合を果敢に追及。続く名曲『WOMAN』でも、大人の女性が抱く孤独と力強さを壮大なバラードの中に昇華させた。公私にわたるパートナーシップがあったからこそ引き出せた、生の感情がそこには刻まれていたのである。