「海水魚やヤドカリを飼う際、食塩で海水を作っても問題ないのか」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言えば、観賞魚や甲殻類の長期飼育において、食塩を海水の代用品として使うことは不可能です。
市販の食塩の主成分は純度99%以上の塩化ナトリウム(NaCl)です。しかし、実際の天然海水には塩化ナトリウムのほかに、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ストロンチウム、ヨウ素など、数十種類に及ぶ微量ミネラルが絶妙なバランスで溶け込んでいます。これらの成分は、魚の浸透圧調整や骨格形成、ヤドカリの脱皮不全防止において生命維持の根幹を担っています。
塩化ナトリウム単体の塩水に海洋生物を入れると、必要なミネラルが体外へ流出する浸透圧ショックを起こし、数時間から数日で命を落とす結果になります。生体飼育を行う場合は、海水成分を化学的に精密再現した専用の「人工海水の素」を用意することが必須条件です。