「手術をすれば昔のようにどこでも自由に見えるようになる」――そうした誤解を抱いたまま手術に臨んでしまうことが、白内障手術で遠くにピントを合わせた人が後悔する最大の引き金です。人間の本来の水晶体は、毛様体筋の働きによって遠くから近くまで瞬時にピントを調節できます。しかし、手術で挿入する眼内レンズにはこの自在なオートフォーカス機能がありません。
保険診療で広く使われる単焦点眼内レンズは、ピントが合う距離が文字通り「1点」に限定されます。遠方(5m以上先)にピントを合わせた場合、遠くの景色や標識は裸眼でくっきりと見えますが、30cm〜40cm程度の手元は完全にぼやけてしまいます。術後にスマートフォンを手に取った瞬間、画面の文字が二重三重にぼやけ、「手術前より手元が見えなくなった」と強いショックを受ける患者が続出しているのが実情です。
「遠くが見えれば快適だろう」と安易に決めてしまうと、術後は爪切り、読書、値札の確認、薬の用量チェックなど、日常のあらゆる場面で老眼鏡の装着が絶対条件になります。眼鏡をかけたり外したりする煩わしさが大きなストレスとなり、結果として見え方への不満へと直結してしまいます。