この言葉の成り立ちを理解すると、二度と誤用しなくなる。「役不足」のルーツは、江戸時代の歌舞伎の世界にある。芝居の配役を決める際、看板を背負う名役者に対して通行人や端役のような小さな役(役柄)を割り当てたことで、「こんな軽い役では自分の演技力を発揮できない」と役者が不満を抱いた状況から生まれた言葉だ。
つまり、「役」とは演じるべき役割のことであり、「不足」はその役柄の重要度が役者の格に足りていないことを指す。役者の腕前が足りないのではなく、役のほうが役者の器に追いついていないというダイナミズムを理解すれば、自分を主語にして使うことがいかに不自然であるかが腑に落ちるはずだ。