料理の主役を張るのは、全国や地元近郊の契約農家から毎朝届く力強い野菜たちだ。大地の滋養をたっぷりと吸い上げて育った旬の素材は、噛みしめるほどに濃密な甘みと力強い香りが口いっぱいに広がる。
厨房では、素材の個性を殺さぬよう、下処理から調理に至るまで極めて繊細な仕事が重ねられる。煮物、和え物、素揚げ—それぞれの食材が持つ水分量や硬さを見極め、引き算の美学で仕上げられた「おばんざい」は、一口食べるごとに身体の奥底へと染み渡っていく。派手な演出に頼らない。ただ素材の素顔を磨き上げる誠実な手仕事こそが、食通たちを唸らせる理由だ。