トムが冒頭から重厚なタッチで奏で始める楽曲の正体は、19世紀の「ピアノの魔術師」と称されたフランツ・リストの代表作、『ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調』です。
この楽曲は、重々しく哀愁を帯びた前半の「ラッサン(Lassan)」と、テンポが急上昇して爆発的な熱狂を生む後半の「フリスカ(Friska)」という2部構成で展開されます。クラシックピアノ曲の中でも屈指の難易度を誇り、跳躍、連打、急速なアルペジオといったリスト特有の超絶技巧がこれでもかと詰め込まれているのが特徴です。
作中では、トムが優雅に弾きこなす前半から一転、ピアノ内部で眠りを妨げられたジェリーが目覚めることで事態は一変。フリスカの超高速テンポに合わせて、ハンマーで殴り合い、鍵盤の隙間に指を挟まれながらも、トムは「絶対に演奏を止めない」という意地を見せます。クラシックの最高難度曲と命がけのギャグが完璧に融合したことで、類を見ない緊張感とグルーヴが生み出されました。