「あたり前田のクラッカー」というフレーズの元ネタは、1962年(昭和37年)から1968年(昭和43年)にかけて朝日放送(ABC)制作・TBS系列で日曜夕方に放映された伝説の公開時代劇コメディ番組『てなもんや三度笠』にあります。この番組は最高視聴率が関西地区で60%超、関東地区でも40%を超えるなど、文字通りの社会現象を巻き起こしました。
物語の主人公である浪人「あんかけの時次郎」を演じたのが名優・藤田まこと氏であり、その相棒である小坊主「珍念」を演じたのが怪優・白木みのる氏でした。オープニングの決まり台詞として、時次郎が右手に持った抜身の刀を振るいながら、懐からおもむろにクラッカーの袋を取り出し、カメラを凝視して言い放ったのが次のフレーズです。
「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!」
単独提供スポンサーであった大阪府堺市の菓子メーカー前田製菓の看板商品を、主人公の決め台詞に完全に組み込んだこの演出は、稀代の脚本家・香川登志緒氏とプロデューサーの澤田隆治氏の手腕によるものでした。当時の番組制作陣の証言録や回顧録によると、劇中のストーリーと広告宣伝の境界をあえて曖昧にする「インテグレーテッド・コマーシャル(生CM)」の手法は、視聴者に広告をスキップさせず、笑いの一部として自然に消費させる画期的なマーケティング戦略だったことが浮き彫りになっています。