「電話が鳴り止む瞬間が1秒もない」。都内城南地区でエアコン修理を請け負う空調設備会社の代表は、机の上に山積みになった伝票を前に天を仰ぐ。
2026年問題として以前から警鐘を鳴らされていた熟練技術者の大量引退と、若手の人手不足。このダブルパンチが、未曾有の猛暑と正面衝突した。冷媒ガスの充填やコンプレッサー交換といった作業は、専門の国家資格と現場での経験値が要求される。どんなに需要が跳ね上がろうと、明日から誰でも代行できる仕事ではないのだ。
部材不足も影を落とす。世界的な銅価格の高騰とサプライチェーンの細分化により、特定基板やファンモーターの国内在庫は軒並み払底。結果として、「見積もりまで1週間、部品調達に10日、工事日はさらにその後」という悪夢のタイムスケジュールが常態化している。今この瞬間に部屋の冷房が止まることは、約1ヶ月間のサバイバル生活を強いられる宣告と同義だ。