結論から明かすと、事件当時のマンション事業本部の現場担当者や部長クラスの責任者が懲戒解雇(クビ)処分を受けた事実はありません。公表された公式資料および社内処分結果によると、現場担当者および事業本部長らに下されたのは「けん責」「減給」「降格」といった社内規定に基づく懲戒処分でした。
一般的に、数億円規模の損害を会社に与えた場合、民間企業では懲戒解雇や損害賠償請求に発展するケースも少なくありません。しかし、積水ハウスが現場担当者を解雇しなかった背景には、法的な事情と組織防衛の論理が存在していました。
当時、警察による捜査や社内調査委員会(弁護士らで構成)による徹底的なヒアリングが行われましたが、「現場社員が地面師グループと結託してキックバックを受け取っていた」という共謀・背任の証拠は一切確認されませんでした。会社側としては、社員自らが詐欺に加担したわけではなく、あくまで「業務上の重大な過失によって騙された被害者」という法的位置づけをとらざるを得なかったのです。もしここで担当者を背任等で懲戒解雇してしまえば、積水ハウス自身が「善意の被害者」として詐欺グループを刑事告訴・民事追及するロジックに矛盾が生じるリスクもありました。