サンリオの歴史上、最も社会的な波紋を広げたのが「サンリオ封印キャラの理由」として語り継がれる表現問題と法廷闘争です。都市伝説として語られがちな2つの重大事件には、明確な記録と公式の対応が存在します。
「みんなのた坊」自主回収・封印の真相と再起の歩み
1980年代後半に絶大なブームを巻き起こし、1988年と1989年のサンリオキャラクター大賞で2連覇を達成した「みんなのた坊」。いつも口を開けて元気いっぱいに笑う彼の姿は、当時の日本中のステーショナリーを席巻しました。しかし1989年、た坊が発刊した絵本『た坊のことばのほん』の内容に対し、障害者団体から「知的障害者を揶揄・ステレオタイプ化しているのではないか」という抗議が寄せられました。
当時のサンリオは事態を重く受け止め、関連書籍やグッズの即時回収・販売停止という極めて重い決断を下します。これにより、人気絶頂だったた坊は突如として表舞台から姿を消すことになりました。サンリオはその後、キャラクターの設定やメッセージ性を真摯に再構築し、「いつも素直で明るく、失敗しても前を向く元気な男の子」という世界観を確立。1990年代半ば以降、慎重に活動を再開させ、現在では歴史的名作キャラクターとして公式に大切に扱われています。
「キャシー」とミッフィーの著作権訴訟問題
一方で、法的な係争によって決定的な終止符が打たれたのが、ハローキティのお友達として1976年に登場したウサギの女の子「キャシー」です。2010年、オランダのディック・ブルーナ氏の著作権管理会社「メルシス社」が、「キャシーは『ミッフィー(うさこちゃん)』の著作権を侵害している」として、アムステルダムの裁判所に製造・販売の差し止めを求めて提訴しました。
日蘭双方での法廷闘争に発展しかけた矢先の2011年3月、東日本大震災が発生します。両社は「争いにかける巨額の訴訟費用を復興支援に充てるべきである」という人道的な大局観から和解に合意。共同で義捐金を寄付すると同時に、サンリオ側がキャシーを用いた製品の製造を取りやめる約束を交わしました。この歴史的合意により、キャシーは現在に至るまで公式のグッズ展開やメディア露出が完全に終了しています。