プロ野球ファンのみならず、多くの人々が日常的に耳にする「広島東洋カープ」という名称。その中核をなす「カープ(carp)」の英語における本来の意味は「鯉(コイ)」です。
語源をさかのぼると、俗ラテン語の「carpa(川にすむ魚の一種)」や、古代ゲルマン祖語で「つかみ取る」「収穫する」といった意味合いを持つ言葉に由来するとされています。ヨーロッパにおいてコイは、過酷な環境でも生き抜く生命力の強い淡水魚として古くから認知されてきました。
日本国内のプロ野球チーム名を見渡すと、ジャイアンツ(巨人)、タイガース(虎)、ライオンズ(獅子)、ドラゴンズ(竜)といった、強大で勇猛果敢な怪物や肉食獣を冠した球団が主流を占めています。その中にあって、淡水魚である「鯉」を選んだ広島のネーミングは極めて異色であり、創設当時から強い独自性を放っていました。
では、なぜ広島の球団はトラやワシのような猛獣ではなく、あえて「鯉」をチーム名に選んだのでしょうか。そこには、他球団のような「強さの誇示」とはまったく異なる、広島という土地ならではの深い歴史と地理的必然性が横たわっていました。