ネット空間を調査すると、学校や会社を休む免罪符として「37度の壁」を突破しようとするマニュアルが氾濫している。検索上位に並ぶ情報サイトでは、前日からの冷水シャワー浴び、過度な厚着による睡眠、激辛食品の大量摂取、脇の下に硬貨や玉ねぎを挟むといった真偽不明の民間療法が、まことしやかに推奨されている。中には「道具なしで体温を上げる」「実験で実証済み」と銘打ち、読者の焦燥感を煽るコンテンツも散見される。
取材班が入手した教育関係者や医療従事者の証言からは、こうしたネット情報の無謀な実践による悲惨な末路が浮かび上がる。都内の中学校に勤務する養護教諭は、保健室での緊迫した光景を次のように明かした。
「月曜日の朝になると、顔を真っ赤にして息を荒らげ、体温計で38度近くを叩き出す生徒が定期的に現れます。問診を重ねると、登校直前に熱湯風呂に限界まで浸かり、暖房を最大にした部屋でダウンジャケットを着込んでいたと白状しました。発熱ではなく完全なうつ熱(体内に熱がこもる状態)で、脱水症状から意識を失いかけた危険な状態でした」
さらにSNSや掲示板を検証すると、体温計を毛布や手のひらで強く摩擦して数値を跳ね上げようとした結果、接触部の摩擦熱で皮膚を水疱化させたり、最新の予測式電子体温計のセンサーを破損させて家族や上司に即座に見破られたという告白が後を絶たない。熱を上げる方法の即効性を求める行動は、身体への実害と嘘が露呈した際の社会的制裁という、極めて割に合わない代償を支払う結果に終わっている。