指数の肩にどれだけ数字を乗せても書き表せない段階に突入したとき、数学者たちは新たな表記法を編み出しました。ドナルド・クヌースが考案した「タワー表記(上矢印表記)」などです。この道具を使って誕生したのが、数学の証明で意味のある役割を持った最大の数としてギネス世界記録にも認定された「グラハム数」です。
数学者ロナルド・グラハムが提唱したこの数は、超立方体の組み合わせ理論に関する証明の「上限」として算出されました。3と3の間に無数の矢印を挟み込み、その階層自体を64段階積み上げることで定義されます。グラハム数の桁数はあまりにも膨大で、全宇宙の物質をインクに変えても表記できず、人間がその数字のすべての桁を脳内に記憶しようとすれば情報量がブラックホールのエントロピーを超えて脳が崩壊するとまで比喩されます。
さらに近年、このグラハム数を芥子粒のように小さく見せる怪物が登場しました。グラフ理論の木(ツリー)に関する問題から生まれた「TREE(3)」や、それを発展させた「SCG(13)」です。TREE(3)の大きさはグラハム数を作るためのタワー表記ですら全く歯が立たず、特殊な関数を用いてようやく定義されます。単なる思いつきの大きな数字ではなく、厳密な数学的命題の答えとしてこうした怪物が導き出されている点は、数学の奥深さを象徴しています。