1958年に新潮社から刊行され、半世紀以上にわたり新潮文庫のロングセラーとして読み継がれてきた小説『海と毒薬』。本作が日本文学界に与えた衝撃は計り知れない。芥川賞を受賞した本作は、純文学の枠組みを超えて読者の胸を打ち続けている。
研究医である勝呂と戸田の二人は、対極の対比を成す。恐れながらも流されていく勝呂と、罪悪感そのものを認識できない冷淡な戸田。遠藤周作は、絶対的な神が存在しないとされる日本人の無意識下において、「罰」とは何によって定義されるのかを問う。他人の目さえ欺ければ、どのような残酷な行為も正当化されてしまうのか。その静かな問いかけは、読者の心に毒のようにじわじわと染み渡る。