1998年の第51回カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞したのを皮切りに、本作は世界的な旋風を巻き起こしました。翌1999年の第71回米アカデミー賞では主演男優賞、外国語映画賞、作曲賞の3部門を受賞。授賞式で名前を呼ばれたベニーニが、客席の背もたれの上を飛び跳ねて登壇した伝説のシーンは、今も映画史の名場面として語り草になっています。
『シンドラーのリスト』や『ピアニスト』など、重厚でシリアスなホロコースト映画のおすすめ名作群が並ぶなかで、本作が際立つのは「悲劇を喜劇で描き抜いた」という前代未聞の表現手法にあります。公開当初は「ホロコーストをコメディにするのは不謹慎ではないか」という議論も一部で巻き起こりました。しかし、観客と批評家が理解したのは、ベニーニが描いた笑いが現実の逃避ではなく、ファシズムや暴力に対する「人間の尊厳による最大の抵抗」であったという点です。
いかなる理不尽な暴力も、人の心にあるユーモアや愛、美しさを奪うことはできない。その普遍的なメッセージが、時代の荒波を越えて観る者の胸を打ち続けるのです。