編成や制作出身の叩き上げとして知られた井上氏は、単なる経営者にとどまらず、報道ジャーナリズムの現場に対しても強いこだわりを持ち続けた。看板報道番組『NEWS23』を中心とした報道ラインの再構築にあたっては、時に厳しい注文をつけつつも、権力に対峙するジャーナリズムの精神を守り抜こうとした。
「現場の記者が真実を追い続ける環境をどう作るか」。赤坂の報道フロアで囁かれたその信念は、スポンサー圧力や政治的圧力とのあいだで揺れ動く民放キー局の中で、TBSの報道ブランドを支える屋台骨となった。世論を二分する問題においても、逃げずに取材を重ねる姿勢。それが視聴者からの信頼という、数値化できない資産を形成していった。