かつての地図ミステリーは、一部のオカルトファンによる「心霊スポット地図」の共有や陰謀論の流布が中心でした。しかし、ウェブライター・雨穴氏による『変な家』シリーズの爆発的ヒット以降、「日常の何気ない図面に隠された論理的異常を見つけ出す」という知的エンターテインメントへと受容のされ方が大きくシフトしています。
ネット上で流布する言説の中には、明確な誤解も少なくありません。代表的なのが「地図から消された村・杉沢村」のような都市伝説です。国土地理院の古地図や自治体の公文書データベースを照合すると、それらの多くは昭和の大合併による行政区画の再編や、ダム建設に伴う計画的集団移転によって水没・消滅した集落であり、怪奇現象による消滅ではありません。
さらに、地図製作業界には「トラップストリート(著作権トラップ)」と呼ばれる、あえて実在しない細い路地や架空の曲がり角を盛り込む手法が存在します。他社による無断複製を法的に立証するための業界の知恵が、デジタル時代になって「地図上にはあるのに行けない謎の道」として怪談化される逆転現象も生じています。