現代において最も具体的な証拠と証言が揃っているのが、2010年FIFAワールドカップ・南アフリカ大会での事例です。44年ぶりに本大会出場を果たした北朝鮮は、初戦で強豪ブラジルを相手に1-2と善戦。この奮闘を受け、第2戦のポルトガル戦は北朝鮮国内で異例となる「生中継」が敢行されました。
しかし、結果は0-7の歴史的大敗。国威発揚を目論んだ生中継が、最高指導者の面子を徹底的に潰す結果となったのです。
大会終了後の帰国後、チームを待ち受けていたのは過酷な現実でした。米政府系ラジオ局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」や韓国メディアが報じた情報によると、平壌の人民文化宮殿で約6時間にわたる非公開の「思想総括集会」が開かれました。会場には体育省の幹部や他競技のアスリート、スポーツ専攻の大学生ら数百名が集められ、選手たちはステージ上で直立不動のまま、激しい糾弾に晒されました。
選手一人ひとりが自らのプレーの至らなさを自己批判させられただけでなく、「敗戦の責任は誰にあるか」として監督のキム・ジョンフン氏を名指しで批判するよう強要されました。その結果、キム・ジョンフン監督は「金正恩氏の信頼を裏切った」として朝鮮労働党から除名処分を受け、建設現場での強制労働(無報酬労働)を命じられたと伝えられています。
この事態を重く見たFIFA(国際サッカー連盟)は、政治的介入の疑いがあるとして北朝鮮サッカー協会に対して公式調査を実施。最終的に協会側が「選手や監督に処罰は科していない」と書面で否定したため処分は見送られましたが、国際社会に北朝鮮スポーツの異様な懲罰システムを強く印象付ける出来事となりました。