新シーズンの発表や特別番組の放送が決まるたび、SNSや一部メディアで必ずと言っていいほど囁かれるのが「松重豊の降板説」だ。背景には、彼自身がインタビューや舞台挨拶などで見せる独特の自虐トークがある。「おじさんがただご飯を食べているだけで何が面白いのか」「胃袋がもう限界」「早く辞めたい(笑)」といった言葉が発せられるたび、言葉通りの意味として受け取った一部のファンやメディアが過剰に反応してしまうのだ。
だが、撮影現場を知るスタッフや関係者の証言はまったく異なる。松重は撮影前日、胃の中を完全に空っぽにするレベルで徹底した体調管理を行っている。運ばれてくる料理に対して真正面から向き合い、一口ごとに新鮮なリアクションを届けるためのストイックな姿勢は、放送開始から一貫して変わっていない。自虐フレーズは照れ隠しであり、作品を面白く伝えるためのエンターテインメント演出に過ぎないのだ。
役柄である井之頭五郎としての佇まいを崩さず、毎回の撮影に全精力を注ぎ込む姿こそが、10年以上にわたり第一線を走り続けられる最大の理由である。降板の噂は、彼の誠実な役作りと高いユーモアセンスが生み出した一種の愛すべき名物現象と言えるだろう。