近年のスポーツ自転車ブームに伴い、GPSやホイールセンサーを利用したサイクルコンピューター 速度計測を行うサイクリストが標準的になりました。ハンドルバー上にリアルタイムで時速が表示されることで走行データが可視化される一方、現場では「速度に対する認知バイアス」が大きな問題となっています。
サイクリストのコミュニティやSNS上での実態証言を分析すると、「下り坂で気づいたら時速60kmを超えていて、ブレーキを握っても止まらない恐怖を味わった」「平地で時速40km巡航を維持しようとして前の車に追突しかけた」といった生々しいヒヤリハットが多数報告されています。自動車と自転車の決定的な違いは、「生身の身体が外気に露出していること」と「ブレーキ性能・接地面積の圧倒的な差」です。
時速40kmで走行する自動車が急ブレーキをかけた場合の制動距離は約8〜10メートル程度ですが、自転車の場合はタイヤのグリップ限界が低く、急制動時に前転(ジャックナイフ)やスリップを起こすリスクがあるため、安全に停止するには20メートル以上の空走・制動距離を要します。サイクルコンピューターの画面に表示されるデジタル数値の軽快さに目を奪われ、物理法則としての運動エネルギー(速度の2乗に比例する破壊力)を過小評価してしまう心理的落とし穴が潜んでいます。