爪全体が白っぽく濁り、健常時のようなピンク色の透明感が失われている場合、単なる爪自体のトラブルではなく内臓疾患を疑う必要がある。特に警戒すべき病態が肝硬変に伴う爪の白濁である。
代表的な臨床所見として知られるのがテリー爪(Terry's nails)だ。これは爪甲のほぼ全体(近位部から約80%)がすりガラスのように白濁し、爪の先端部分(遠位端の1〜2mm)だけが正常なピンク色あるいは赤褐色として帯状に残る現象を指す。肝機能が著しく低下すると、肝臓で合成されるタンパク質であるアルブミンが減少し、低アルブミン血症を引き起こす。これにより爪床の結合組織に浮腫が生じ、毛細血管網の構築が変化して白く見えるようになる。
テリー爪は肝硬変患者の約8割に認められるとされるが、肝疾患だけでなく慢性心不全や糖尿病、腎不全患者にも出現することが確認されている。さらに、全身の血液循環や造血機能の低下も爪の色に顕著に現れる。貧血による爪の色の悪化では、血中のヘモグロビン濃度が低下するため爪床の赤みが消え、爪全体が白っぽく蒼白になる。進行すると爪が薄くなり、反り返ってスプーンのような形になる匙状爪(スプーンネイル)を併発するケースも少なくない。
また、爪の根元の白い部分(爪半月:ルヌラ)の変化も見逃せない指標だ。爪半月は爪母で作られたばかりの未熟な角化細胞が水分を含んで白く見えている部位だが、これが異常に肥大化したり、逆に完全に消失して爪全体と一体化して濁っている場合は、代謝異常や重篤な内臓疾患のサインとして臨床的に注視されている。