ネット上の情報や一部のまとめ記事では「未読であれば確実に削除できる」といった乱暴な解説が散見されますが、これは現代のエンタープライズITインフラの現場を無視した危険な誤解です。
盲点の第一は、企業の監査ログとアーカイブシステムです。多くの企業ではコンプライアンス維持のため、送受信されるすべてのメールをゲートウェイやクラウドアーカイブに瞬時にコピー保存するソリューションを導入しています。ユーザーのOutlook画面上でメッセージの取り消しが成立し、受信トレイから見かけ上のメールが消えたとしても、サーバー側の監査ログには原本と取り消し履歴の双方が永久保存されます。社内の不正やハラスメント発言を取り消し機能で「証拠隠滅」しようとしても、社内調査が入れば一瞬でログから抽出される仕組みになっています。
盲点の第二は、スマートフォンアプリの「バックグラウンド同期」です。相手がPCを開いていなくても、モバイル端末が深夜や移動中に裏でパケットを受信し、ローカルのキャッシュデータベースにメールデータを保持してしまうケースです。こうなると、Exchangeサーバーが後から「取り消し」の信号を送っても、端末ローカルのデータベースに保管されたデータが正常に削除されないという挙動が確認されています。